業務改善を成功に導くポイントを徹底解説
この記事では、業務改善の実践的な進め方やポイントを解説していき、効果的で持続的な業務改善を実現できるチームづくりをサポートします。
業務改善の目的
この記事を読んでいる皆様は、なぜ業務改善に取り組む必要があるのでしょうか?
例えば、残業時間の削減、人手不足への対応.、売上の向上、顧客満足度の向上、リードタイムの短縮、製品サイクルの高速化、ワークライフバランスの実現、コスト削減 、DXなど、テーマの大小はあれど生産性向上のためであることが考えられます。
また、我が国において、2018年7月6日に公布された働き方改革への対応時にも、業務改善の取り組みを実施したのではないでしょうか。
「働き方改革」の目指すもの
我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
この働き方改革へトップダウン的に対応したことによって、プレイングマネージャーやエース社員へしわ寄せがいったり、品質が下がっていたり、売上が落ちていたり、生産性が低下している組織もあることと思います。
一方で、働き方改革をはじめ、世の中はいわゆるブラック企業を根絶していこうという流れに向かっています。
しかし、法規制や世の中の流れがあったとしても、リモートワークの普及による見えない残業や形だけのジョブ型雇用、高い離職率、求める人材の採用が困難、ペーパーレス化だけのDXなど、古い体質や問題を抱えたままで変化できていない組織が多いのも実情です。
そこで、業務改善に真剣に向き合い、生産性向上を目的として、それを実現する手段を探している段階かと思います。
業務改善の進め方は企業によって様々なやり方が実践されていますが、小手先のやり方ですぐに生産性が戻ってしまったり、効果が思ったほどあがらなかったり、改善活動のプレッシャーによって風土が悪くなるなど、失敗しやすいやり方で活動していないか・活動しようとしていないかを一度立ち止まって考えてみることを推奨します。
よくある失敗するかもしれない業務改善のパターン
ここでは、根本的な問題を把握していないことに起因する業務改善が失敗するリスクを秘めているパターンを見ていきます。
1.課題解決のために新しいITシステムを導入
情報共有のためのナレッジシステム、タスクの見える化のためにPJ管理システム、営業強化のためにSFAなど、現代の業務には多種多様なツール導入が欠かせません。
しかし、多額の開発費用や高いランニングコストで導入したにも関わらず、現場が使いづらいシステムであったり、システム間連携ができずに面倒な付随作業が新たに発生したり、スタッフの工数が想定よりも減らずに投資対効果が低かったという例があります。
これは、現場の問題の本質が正しく把握されていなかったり、業務フローにムリがあるまま適用しようとしたり、トップダウン的に決めてしまったり、利用を啓蒙できなかったりという問題に起因します。
2.ECRSを適用
改善の4原則であるECRSを適用して業務改善を進めてみるところから始める組織も多いのではないでしょうか。
ちなみに、ECRSとは、Eliminate(排除)・Combine(結合)・Rearrange(交換)・Simplify(簡素化)を行うもので、元々は製造現場で使われていましたが、今ではホワイトカラーも含めた多くの現場で使われています。
もちろん、自前でECRSから実行してみることは素晴らしいことです。
しかし、そのチーム内で改善できる範囲のルーチン業務だけの改善に終わってしまい、メンバーの不問の根源の解決をしていく未来が見えず、メンバーのモチベーションが下がり、下火になっていくことや雰囲気が悪くなることが起きる可能性があります。
また、ECRSだけでなく業務改善の進め方についてきちんと学ばないと、業務の押し付けあいによるセクショナリズムの発生、前述のような安易なシステム導入、効率化重視による品質の低下などが発生していまします。
3.形だけの風土改善
やらされ感のある雰囲気が漂う風土から、やる気に満ち溢れてディスカッションが盛んになり、横の繋がりも増え、新しいアイディアを出せるようにしようという目標を立てたとします。
確かに、付加価値の創造にはやらされ感満載の文化ではなかなか難しく、のも実情です。
ただし、
- 理念・ミッション・ビジョン・バリューの唱和や研修
- ランチ会の実施
- 経営陣と若手の意見交流会
- 新規アイディアの募集
- 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の啓蒙
などを取り入れようとしていませんか?
これら自体は組織の目指す文化にマッチしている場合は一定の効果があるかもしれません。
しかし、スタッフはKPI達成やタスク実行が日常であり、上記を実施がその日常に役立つと思わない限り、目的が腹落ちされないまま上辺だけの活動となり見かけ上の文化となってしまう恐れがあります。
つまり、雰囲気や付加価値創造の文化形成は、普段の業務のプロセスの中で自然に実施できるように仕組み化することが大切であり、その仕組みがあった上ではじめて上記の施策が意味のあるものになります。
さらに、問題の原因は社員ではなく経営者や管理者側の風土である場合も実は多くあります。
例えば、会社の経営理念やトップの思いといった情報は共有されやすいものですが、各事業役員や部長がそれらを尊重している姿を見せられなければ、一般社員まで浸透させて文化にすることは難しいでしょう。
成功する業務改善の進め方の例
前述までの失敗パターンは、業務が見えていないこと・改善に組織的に取り組めていないこと・持続的に改善していける文化が作れなかったことが原因でした。
逆に、一過性でも問題無い場合はECRSの考え方やITシステムの導入をすれば解決できると言えるでしょう。
ここでは、業務改善を通じて業務改革・組織改革に繋がるような長期的に見て意味のある業務改善の①〜⑩の進め方とそのポイントを解説していきます。
①業務改革推進チームの体制づくり(全社的なプロジェクトの場合)
- キーマンとなる、各事業部や部門のエース級メンバーの招集計画
- 初期メンバーの招集とプロジェクトキックオフ
- 推進チームと経営陣で全社的な問題点/課題/目標/実現手段などの目線合わせ
②トライアルチームへの導入支援(全社的なプロジェクトの場合)
- トライアルチームへの目的/目標/方法などの研修会を実施
③チーム基本情報のオープン化
- 「存在意義(Why)・使命(What)」を作成
- 「5年・3年・1年目標(ビジョン)」を作成
- 「グランドルール」を作成
④ルーチン業務の棚卸し
- 「業務体系表」を作成
- 大中小分類にルーチン業務を定義
- 小分類に頻度、発生タイミング、納期を記載
⑤ルーチン業務の整理整頓
- 「業務体系表」に改善着眼メモを追記
- 以下の改善の8原則を5W1Hを意識しながら活用
- 廃止:目的が弱い業務や作業をやめられないか
- 削減:頻度や数、コストを減らせないか
- 容易化:ルール、フォーマット、手順を簡単にできないか
- 標準化:イレギュラーやミスを減らせないか
- 計画・随時化:定型かつ可視化された業務の対応コストを下げられないか
- 集中・分散化:対応時期や部署を変更して効率化できないか
- 自動化:手作業をExcelマクロやRPA、IT化できないか
- 習熟化:ツールの使い方や仕事の考え方を学んで効率化できないか
- 上記のメモを元に、まずは2週間程度で実行できる「課題」作成
- すぐに実行できるところから取り組む
- 課題には以下の予想リードタイムの付け方がおすすめ
- 0.5, 1, 2, 4, 8:数値時間以内
- SS:1営業日以内
- S:3営業日以内
- M:5営業日以内
- L:10営業日以内
- 2L:20営業日以内
- ∞:2L以上、不明
- ?:未整理
⑥業務推進のオープン化
- 週次にチーム内で取り組む業務の「タスク」を作成
- 「業務体系表」「課題」から抽出
- ルーチン業務の抜け漏れを「業務体系表」に追加
- 多すぎたり、少なすぎたりは、今後の振り返りで調整していく
- デイリーシェアを実施
- 各自の進捗共有、タスクの担当者割当
- 複数プロジェクトやチームを兼任しているメンバーは割合を考慮
- 「気づき」を都度共有(チャットやPJ管理などを活用)
- 2週間のレビューと振り返りを実施
- ⑤の課題の実行状況と結果を情報共有し、「業務体系表」を更新
- 「気づき」から「グランドルール」「業務体系表」を更新
- 「課題」を追加
⑦テーマ設定
- 各メンバーから個人・チーム現状をヒアリング(以下は例)
- 個人のありたい姿とギャップの把握(目標・役割・会社の問題点の把握)
- モチベーションがあがらない業務(役割・業務の問題点の把握)
- やりづらい業務(役割・業務の問題点の把握)
- チームの雰囲気(属人化やキーマンの把握)
- チーム外の雰囲気(セクショナリズムの把握)
- ヒアリングを元にテーマを抽出
- 6W2H、なぜなぜ分析、ロジックツリーなどのビジネスフレームワークで問題を深堀り
- チームビジョンを元にテーマを設定
- コントロール可能な問題と不可能な問題に分類
- 課題を設定
- 課題の優先順位付け(緊急度、効果、実現コスト)
⑧定着化
- ①〜⑦を周期で繰り返し
- 上記の間隔やプロセスも都度振り返りから改善していく
- 以下のようなマネジメントも必要に応じて実施
- 「業務スキルマップ」を作成し、アップスキリング計画を立案
- 「役割表」を作成し、チームに必要な役割とメンバーの強みを強化
⑨トライアル評価
- トライアルチームと推進チームが協力し、定量/定性的な効果をまとめて報告会を実施
⑩拡大計画
- ⑨を元に、推進チーム自身もプロセスや不足点をテーマ設定して改善・拡大計画を立案していく
まとめ
業務改善を行う上では、一過性でなく定着化させることができるプロセス設計をすることが経営者や管理者の大切な仕事であると言えます。
そのために、コンサルタントに任せっきりにするのではなく、自分たちの手で推進するという決意と共に、業務改善を実現するための方針および体制が重要となります。
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